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お客様は無意識に嘘をつく
経営をしていると、たびたびお客様に嘘をつかれることがあります。
言葉でNO、態度でYES。
言葉でYES、態度でNO。
これに振り回されていると、あなたは迷うばかり。
誤解がないように言っておきますが、これ、お客様は悪気なくやっています。
こちらを気遣っての嘘もあれば、社交辞令のつもりの軽い嘘もあり、時には自分自身が嘘をついている自覚さえないことも。
この例として経営者仲間で良く話されるのが「友人が、独立前は独立したらお客になると言っていたのに、一度もお客様にならなかった」という話です。
あまりに多く聞きすぎて、もはや定説です(苦笑)。
アンケートは真実にたどりつかない
Twitterで日本マクドナルド原田社長がこんな発言をして話題になりました。
「アンケートをとると必ずヘルシーなラップサンドやサラダがほしいと要望があって商品化したけれども売れたためしがない。
ヘルシーなサラダでなくメガマックが売れる。お客は言うこととやることが違うからお客の話を聞いてはだめ。」
これも、アンケートに回答しているお客様は、決して嘘をついているつもりはありません。
今、これを読んでいるあなたも身に覚えがありませんか?
無意識に、ほんとうに無意識に「いいこと言わなきゃ」と思ってしまうのが人間の性分です。
そのうえ、このマクドナルドのアンケートの例では、アンケート対象のお客様は、すでに店内でハンバーガーを食べているわけです。
だから、頭の中で「今現在のメニューに追加するなら」と考えています。
肉が入ったハンバーガーを食べた後ならヘルシーなラップサンドやサラダが食べたいのは当たり前なことです。
道行く人にアンケート取らなきゃいけませんよね(苦笑)
言葉よりも態度を信じる癖をつけましょう
お客様は、嘘をつく。その時々の心理や状況によって、いろいろな嘘を。
嘘とは言えないような嘘から、故意の嘘まで。
これを頭の片隅ででもわかっているかどうかでセールスにグンと差が出ます。
これをわかっているかで経営に大きな差が出ます。
飛行機会社による痛恨のアンケート調査
ある航空会社もアンケートで痛恨の痛手を負いました。
それは、その航空会社が、自社のロイヤルカスタマー(選んでたびたび乗ってくれるお客様)に「もっと弊社の飛行機を使っていただくために改善して欲しいことを教えてください」とアンケート調査をした結果を信じてしまったからです。
アンケート調査の結果は「もっと座席と座席の間を広くしてほしい」という意見が一番多かったので、その航空会社は飛行機を作り変えました。前の座席との距離を広くしたのです。
このことにより、1回に乗せられるお客様の数は約20%減りました。
一台飛行機を飛ばす費用を考えると大きな決断だったのがわかります。
でも、お客様は増えませんでした。ロイヤルカスタマーの乗車回数さえ増えませんでした。
そのうえ、座席と座席の距離を広くして会社が資金で苦戦している間に、ライバルの航空会社が「機内WiFi無料サービス」を開始して多くの新規顧客をつかみました。
この話は、ANAとJALの話です。
「機内WiFi無料サービス」は1円も費用がかかっていないはずです。
もしかかっていてもWiFi環境を整える分だけ。
座席を新しくした費用とは比べものにならない安い費用でJALはANAにお客様をJAL機に乗せることに成功したのです。
ANAはアンケートをしたのに負けました。
JALはアンケートもしないで勝ちました。
アンケートは取り方に注意しないと使い物にならないことが多々ありますので、ホントに気をつけて欲しいです。
数字でさえ嘘をつく
さて、こんなことがあるので「数値化して考えましょう」となるのですが、この数値化で嘘をつくことが可能だということを知らない人が多くいます。
友人で日経でエクセルの講座を担当している米谷学さんのFBにこんなことが書かれていました。
「よく○○と××との間には関連が認められる」とかいう研究結果に基づく記事を目にしますね。
だいぶ前ですが、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)から、朝食をきちんと(ここでは頻度のようです)摂っている生徒の方が、そうではない生徒に比べて、総じて成績が良かったとする記事が大きく採りあげられました。
確かに朝食の摂取と成績の良し悪しとの間には、相関関係はあったのでしょう。
しかし例えば親御さんが、朝食や家庭学習、就寝時間などの生活習慣をきちんと身につけさせているかどうかが鍵なのだとしたら、朝食と成績の関係だけでは語れない可能性があります。また相関関係と因果関係を混同させてはならない例もあります。
この場合であれば、「朝メシ食って成績アップだーーーっ!」と短絡的に結び付けるわけにはイカナイことくらいは、常識的には理解できることだと思います。
短絡的な記事が信じられてしまっているので彼は「変ですよ」と書いているわけです。
データは前提や背景を確認しましょう
「朝メシ食って成績アップだーーーっ!」という説を多くの人が受け入れてしまうのは、権威のある人が数値データを使って説明している記事を読んだからです。
元のデータは前提や反証なども盛り込まれたデータかもしれませんが、記事にする時は、そういうところまで書かないのが普通です。なにせ記事ですから、専門家が読むわけではなく、一般の私たちにわかるように書かれています。
また、関連性があるというのが、どのくらいのパーセンテージであるのかも書かれていません。
しかし、「朝食と成績の良し悪しに関連性がある」と権威のある人が語っただから「朝メシ食って成績アップだーーーっ!」と短絡的にだと多くの人が信じてしまいます。
他にも、「64%の人が不倫をしたことがある」という記事を読んで行ったら、たった75人への中で48人だから64%と書かれているだけでした。しかも無作為のデータではなく、ある業種の人だけ対象といった記事。
これを「世の中の64%の人は不倫したことがある」と書くと使えないデータになります。
正しくは、「〇〇業種の人の75人に聞いたら48人が不倫経験者だった」ですよね。
これを64%と書くことに間違いはありません。%表示にすると全員が驚く話になりますので記事としては正解かもしれません。
しかし、これを〇〇業の人と書くと〇〇業に関係していない人にとっては外部のゴシップネタであり、75人という分母が解ってしまうと、まるで信用できないデータになります。
このように、数値でさえ表現の仕方でマジックが起こせるのですから頭から信用しないで前提や背景をしっかり考えましょう。
まとめ
見るべきは言葉よりも態度です。
目は口ほどのものを言う。よーくよーく観察して、もしかしたらお客様自身でさえ気付いていない本音で望んでいることを探り当てましょう。
そうして数値化したデータも、前提と背景という語られない部分もチェックする習慣をつけましょう。
前提と背景が違うと、同じ数値でも意味がまるで違ってしますから注意しましょう。